中里内科クリニックDM
  • HOME
  • 糖尿病の予防と治療

糖尿病の予防と治療

糖尿病とは、にも述べたとおり、糖尿病はその発症に遺伝素因も強く関与する病気です。両親や祖父母、おじやおばに糖尿病のある方は特に注意が必要です。特に、その方々の中に太ったことがないのにインスリンを使って治療している人がいる場合、あなたは生まれつきインスリンの分泌能力が低い可能性があります。また、合併症にも遺伝的素因が関与することがわかっています。家系に糖尿病から強い視力障害を来している、あるいは腎不全で血液透析を受けているような方がいる場合には注意が必要です。ただし、基本的に糖尿病に関連する合併症は、糖尿病を発症しなければ、あるいは、きちんと管理していけば発症することはなく、過度に恐れることはありません。

糖尿病の予防にはやはりその原因に対する対策が重要です。どこに行くにも自動車を使い、ドア・トゥー・ドアのほとんど歩かない生活を送っていませんか?会社で2階に上がるのにもエレベーターを使っていませんか?日頃の運動不足を解消するために運動する時間を作っていますか?野菜を十分に摂ることなどを意識してバランスの良い食事を摂っていますか?ゆっくりよく咬んで早食いにならない食事をしていますか?1日1、2食でどか食いになっていませんか?満腹になるまで食べないと満足できない状態になっていませんか?寝る3時間前には夕食は終わっていますか?間食をする習慣はありませんか?甘い缶コーヒーを1日何缶も飲んでいませんか?などなど、人により注意しなければならないことが違うかもしれませんが、まずは、“何を、どうして、どのようにやるか?”を知っておかなければなりません。糖尿病が心配な方には発症する前にご相談いただければなお良いでしょう。

糖尿病と診断されてしまったあなたにも、“何を、どうして、どのようにやるか?”は重要です。ただ単に、食事療法をしなさい、運動をしなさい、体重を減らしなさいという漠然とした指示では、残念ながら成果が上がらないことは、経験上わかっていますし、行動心理学的にも裏付けられています。当クリニックでは、皆様の生活に潜んでいる問題となる生活習慣を明確にし、少しずつでも改善に向けて取り組んでいくことをサポートするべく、患者様一人ひとりに具体的な生活習慣をお伺いし、具体的なアドバイスをすることを心がけています。

残念ながら糖尿病はただ薬を指示通り飲めば良くなるという病気ではありません。ただし、糖尿病の病態は千差万別であり、その方にあった薬に変更するだけで数値が改善する場合も多々あります。特に、SU剤と呼ばれる薬剤(オイグルコン、ダオニール、アマリール、グリミクロンおよびそれらのジェネリック薬剤)単独で治療を受けている方、SU剤を含む薬剤を内服中で度々強い空腹感に襲われる、あるいは冷や汗や動悸などの低血糖症状を経験している方(あなたに合わせた薬剤がある可能性が高いです)はぜひ当クリニックにご相談ください。

糖尿病のトピックス

ここでは、糖尿病に関するトピックスを随時取り上げて参ります。

2018年2月4日更新
実は、血糖値というものは1日を通して見ると、時々刻々と変化しています。ただし、耐糖能障害のない、いわゆる健常者においては、その値は厳格に調節されていることが知られています。1日を通して120mg/dl未満という人もいます。
徐々に耐糖能が悪化すると、食後に一過性の血糖上昇(“グルコーススパイク”と呼ばれます)が見られるようになります。健康診断では一晩絶食した状態、いわゆる空腹時に採血を行いますので、この食後のグルコーススパイクにはなかなか気付かれません。また、この状態では何ら症状はありません。ただし、このような状態で既に心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性疾患のリスクが上昇していることは看過できません。
一方、糖尿病になると、食後の血糖値の更なる上昇に加え、食前にも血糖値が上昇するようになります。空腹時血糖値も上昇し健康診断でも指摘される状態になってきます。このような状態になるとHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という、1〜2カ月間の平均血糖値を反映する検査値の上昇が見られるようになってきます。

24時間に占める高血糖と低血糖の時間について

図1

このHbA1c値が高いと1日を通して血糖値が高い状態で推移していると誤解され、HbA1c値の高い人では血糖値が正常範囲を超えて低下する、いわゆる低血糖を起こしている可能性はあまりない、と捉えられがちです。しかし、これは事実ではありません。HbA1cが高い患者様は膵β細胞の機能低下が進行していることが多く、血糖値が乱高下している例も多く見られるようになってきます。そのような患者様においては、1日の中に300mg/dlを超えるような高血糖と70mg/dlを下回る低血糖が共存するような状態が日々繰り返されているのです。図1に示しましたが、HbA1c値が高いと1日に占める高血糖の時間割合が増えてきますが、HbA1c値が高くなるほど1日に占める低血糖の時間が減る訳ではないことが分かります。HbA1c値が9.1%以上もあるのに、1日に占める低血糖の時間が1日当たり平均で1時間48分もあるというのです!これまでは、患者様が測定してくださるわずかな血糖値のデータから、その患者様の1日の血糖変動を推測することしかできなかったのですが、今では、その推測が大きく間違っていたことが明らかになっています。
1日の血糖値(に相当する値)の変動が分かる装置が開発され、私たち日本糖尿病学会認定糖尿病専門医にとってはこれまでは知ることがなかった知見を得ることができ、診療の参考になっています。そのような装置も日進月歩の進化を遂げています。図2に示しましたが、上腕に装着した5百円玉大の装置が時々刻々と変化する血糖値(に相当する値)を測定し、軽量で携帯電話よりも小型の測定器(リーダー)でそのデータを吸い上げることができるようになっています(図2)。この装置を正しく使用すると、最長14日間もの日々の連続的な血糖値の変動を知ることができるのです。

持続血糖測定について

図2

計13台もの装置を患者様の血糖コントロール改善のために利用しています。
インスリンやGLP-1受容体作動薬といった糖尿病治療に用いられる注射薬を使って治療中の患者様には一定の条件下で保険診療での使用が可能です。